東京高等裁判所 昭和38年(行ナ)156号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二、本件審決は、引用例に開示された技術内容の認定を誤り、この誤認された事実を前提としてその結論を導くに至つたものであり、その点において違法たるを免れない。本件審決は、本願出願前公知の刊行物であること当事者間に争いのない引用例には、一般に、ポリカルボネートが電気絶縁材料として用いられることが記載されていると認定したこと当事者間に争いのない本件審決理由の要点に徴し明らかであるが、この認定は事実を誤認したものといわざるをえない。すなわち、引用例に示された物質は、原告及び原告補助参加人ら主張のとおりの化学構造式をもつて現わされる高分子重合体であることは本件当事者間に争いがなく、この事実に、<書証>により認めうべき、「ポリ」という語は、多数の官能基を有する化合物又は多数の単量体よりなる高分子重合物質の接頭語として用いられる事実及び<書証>を参酌考量すると、右物質は、「ポリアクリレート」、ああるいは、「アクリレートのコポリマー」と称されるべき特性を有するものであり、一般には少なくとも「ポリカルボネート」と呼称されるべき物質ではないことが明らかである(右物質の重合前の単量体には、カルボネート基が含まれることは、被告及び被告補助参加人の指摘するとおりであるが、右カルボネート基は、重合反応には全く無関係で、化学的変化をせず、官能基として作用していないものであることは、前記化学構造式に徴し容易に窺いうるところであるから、単量体にカルボネート基が含まれているからといつて、それだけで、その高分子重合体をポリカルボネートであるとすることができないことは、いうまでもない。)。
したがつて、前記物質がいわゆるポリカルボネートであるとした本件審決の認定は、事実を誤認したものというべく、他に本願発明におけるポリカルボネートを電気絶縁材料として使用することが本願出願前から公知であつた事実を認めるに足る適確な証拠もない本件においては、右認定事実を前提とする本件審決は、その点において、すでに失当たるを免れない。
(むすび)
三、叙上のとおりであるから、その主張の点に違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由があるものということができる。よつて、これを認容する。
(三宅正雄 杉山克彦 武居二郎)